~とある湖畔から~

脳と意思決定の研究の記録

習慣化と扁桃体

 

論文

目標や成果に向けて行動や努力を継続することは重要であるが、継続することは非常に難しいことである。この困難さに打ち勝つために、習慣化が有効である。

 

習慣化のメリットや習慣を獲得するための方法に関する情報は溢れている。しかし、脳内でどの様に行動が習慣化されていくのか、その脳内メカニズムについての情報は少ない。 

 

習慣化の獲得と固定に関するメカニズムの研究です。 

Basolateral and central amygdala differentially recruit and maintain dorsolateral striatum-dependent cocaine-seeking habits.

Murray, J., Belin-Rauscent, A., Simon, M. et al.

Nat Commun 6, 10088 (2015).

https://doi.org/10.1038/ncomms10088

 

概要

薬物中毒は、慢性的な薬物曝露に対する神経適応であり、習慣化した薬物探索行動である。しかしながら、この薬物探索行動がどの様に形成されるのかについて脳メカニズムはわかっていない。

薬物中毒の問題は、レクレーションとしての薬物使用ではなく、強力な薬物探索行動の習慣化である。この習慣化行動は、腹側線条体ドーパミンが背外側線条体に作用することで獲得されるが、その腹側線条体ドーパミンー背外側線条体経路の習慣の獲得がどの様に獲得されるのか不明である。そこで、扁桃体ー腹側線条体ー背外側線条体の経路に着目し、扁桃体の習慣化への影響を検討する。

 

結果と考察

実験では、ラットにレバーを押すと薬物を獲得できることを習慣化させる。この学習中中に、扁桃体ー背外側線条体の経路を遮断した。

学習の開始時に扁桃体外側核ー背外側線条体を遮断すると、薬物探索行動であるレバー押しの獲得が阻害された。

一方で、扁桃体中心核ー背外側線条体の遮断では、レバー押しの獲得は影響を受けなかった。

 

次に、レバー押しを学習してから、扁桃体ー背外側線条体経路を遮断した。

扁桃体外側核ー背外側線条体の遮断は、学習したレバー押しに影響しなかった。

しかし、扁桃体中心核ー背外側線条体の遮断は、学習したはずのレバー押しが減少した。

以上のことから、扁桃体外側核は習慣行動の獲得、扁桃体中心核は習慣行動の固定に関与することが明らかとなった。

 

感想

習慣化において、扁桃体が下位領域ごとに異なる役割を担うことが興味深い。