~とある湖畔から~

脳と意思決定の研究の記録

脳の価値判断ー報酬とドーパミン神経系ー

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価値判断と脳の報酬系

脳が価値判断するとき、どのような情報処理がなされているのでしょうか?それを知るために、報酬を得たときの脳の活動を見る必要があります。

価値判断とドーパミン

価値判断には、脳内の報酬系として知られるドーパミン神経系が知られています。

このドーパミン神経の活動を見ることで、脳がどのように価値判断するのかが見えてきます。

 

報酬を獲得すると脳内ではドーパミン神経が活動亢進し、脳内にドーパミンが放出されます。

ここでは、報酬を獲得したときにドーパミン神経系の活動はどうなるかドーパミン神経の研究の第一人者であるShultsの研究を見ていきます。

 

この研究では、サルを対象に、中脳の一領域である腹側被蓋野ドーパミン神経と報酬獲得の関係を検討しています。

サルに報酬を与えたときのドーパミン神経の活動を計測すると、報酬の獲得に反応してドーパミン神経が発火(活動)しました (下図)[1]。このことは、ドーパミン神経がその活動により獲得した報酬の価値を計算していることを示唆しています。

 

f:id:Neuart:20211206205150p:plain参考:Schultz dt al., Science 1997

 

ドーパミン神経の活動は行動を学習・強化する

この報酬獲得によって放出されたドーパミンは、報酬の獲得につながった行動が価値が高いことを示し、その報酬を獲得した行動の学習を促進しその行動を強化します。

例えば、オプトジェネティクス(光遺伝学 - 脳科学辞典)という特定の神経細胞の活動を光で操作する最新手法を用いた研究において、自由行動下のマウスのドーパミン神経活動を報酬獲得時と同じように活動亢進させると、ドーパミン神経の活動を亢進させた際にとっていた行動が強化されます [2]。

このように、ドーパミンを介して私たちは行動の価値を判断し、価値の高い行動を学習・強化します。

 

参考文献

  1. Schultz W, Dayan P, Montague PR. A neural substrate of prediction and reward. Science. 1997 Mar 14;275(5306):1593-9. doi: 10.1126/science.275.5306.1593.
  2. Tsai HC, Zhang F, Adamantidis A, Stuber GD, Bonci A, de Lecea L, Deisseroth K. Phasic firing in dopaminergic neurons is sufficient for behavioral conditioning. Science. 2009 May 22;324(5930):1080-4. doi: 10.1126/science.1168878. Epub 2009 Apr 23.

 

 

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